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弁護士法人心 船橋法律事務所

遺留分の放棄

  • 文責:所長 弁護士 岩崎友哉
  • 最終更新日:2024年5月9日

1 遺留分の放棄の概要

遺留分の放棄とは、本来相続開始後に遺留分侵害額請求権を有することになることが予定されている方が、被相続人の生前または死亡後に、遺留分侵害額請求権を放棄することをいいます。

まず、遺留分と遺留分侵害額請求権について説明します。

被相続人がお亡くなりになり、相続が開始されると、相続財産は原則的には相続人に、法定相続割合に基づいて相続されます。

もっとも、遺言がある場合には、特定の相続人や相続人以外の人が遺産の全部ないし大部分を、相続または遺贈によって取得するということがあり得ます。

一方で、相続財産は相続人の生活を維持するための存在であるとも考えられています。

そこで、一定の相続人には最低限の相続財産の取得分が保証されており、この最低限の取得分のことを遺留分といいます。

遺言によって遺留分が侵害されている部分については、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害している特定の相続人や受遺者に対して金銭の支払いを請求することができます。

2 遺留分の放棄の方法について

⑴ 相続開始前(被相続人がお亡くなりになる前)の遺留分の放棄

被相続人がお亡くなりになる前に遺留分の放棄をするには、家庭裁判所で一定の手続きを行い、許可を得る必要があります。

具体的には、遺留分権利者の方が、家庭裁判所に対して、家事審判申立書と付属書類を提出することで、手続きが開始されます。

その後、家庭裁判所による審査が行われます。

被相続人死亡前の遺留分の放棄は、最低限の生活保障としての役割を持つ遺留分を放棄してもよいといえるだけの事情があると認められた場合にのみ許可されます。

例えば、特定の相続人が家業を継ぎ、負債も全部引き継がなければならないという事情がある場合や、すでに遺留分に相当する額以上の生前贈与を受けているという事情がある場合などが想定されます。

被相続人となる方がご存命の段階においては、強硬な手段等を用いて遺留分権利者に対して遺留分の放棄を迫るということが考えられるため、家庭裁判所において、客観的な視点で遺留分の放棄を認めてよいか否かを判断することになっています。

⑵ 相続開始後(被相続人がお亡くなりになられた後)の遺留分の放棄

被相続人死亡後に遺留分を放棄したいという場合には、特に何もする必要はありません。

遺留分侵害額請求は、相続開始と遺留分を侵害する遺言・贈与を知ってから1年以内に行わねばならないとされているため、1年以上経過すれば、時効によって請求権は消滅するため、事実上遺留分を放棄したことになります。

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