過払い金について和解をする場合の相場
1 和解は訴訟に比べると支払金額が低くなる傾向にあります
結論から申し上げますと、貸金業者等と直接交渉をし、過払い金の返還について和解をした場合、訴訟を提起して支払いを求めた場合に比べ支払いを受けられる金額は低くなる傾向にあります。
過払い金の返還請求する場合、まず貸金業者等から取引履歴を取得します。
そして、この取引履歴をもとに引き直し計算を行い、過払い金の金額を算定します。
多くの場合、まず貸金業者等に対して、算定された過払い金と、返還日までの利息を支払うよう請求する書面を送付し、その後交渉を行います。
訴訟を提起せずに和解交渉をする場合、貸金業者等の方針や財務状況、争点の有無、訴訟提起の可能性の有無などによって、貸金業者等から提案される金額は変わりますが、一般的には、訴訟を提起すると請求側の負担も大きいことから、算定された過払い金の金額よりも低い金額を支払う旨の提案がなされることが多いです。
以下、任意交渉で和解した場合の返還金額の相場について具体的に説明します。
2 過払い金の返還請求に関する争点がない場合
貸金業者等が過払い金の返還を法的に拒否できる理由のことを、争点といいます。
争点がない場合には、貸金業者等は法的に過払い金の返還を拒否できませんので、原則として発生している過払い金と返還日までの利息をすべて支払う必要があります。
しかし多くの場合、貸金業者等は、任意交渉の段階では、算定された過払い金よりも低い金額の支払いを提案します。
初回の提案時は、過払い金の元金の5割~7割程度の金額を提示することが多いです。
過払い金が100万円である場合であれば、50~70万円程度の支払いを提案されるということになります。
その後、さらに交渉を行い、訴訟提起の可能性があることなども含めて交渉することで、初回提示額よりもある程度高い金額で和解に至ることもあります。
3 過払い金の返還請求に関する争点が存在する場合
2とは逆に、これまでの借入や返済の状況等によっては、争点が存在するというケースもあります。
争点の代表的なものとしては、取引の分断(一度完済し、しばらく経過した後に借入と返済を再開した場合)、信用の低下等による取引停止措置などが挙げられます。
争点が存在するケースにおいては、貸金業者等は争点となる事実を主張し、過払い金の返還に応じない旨の通知をすることがあります。
これに対しては、訴訟等で争う余地がある場合には訴訟を提起して過払い金の返還を求めることもあります。
もっとも、訴訟提起を検討していることを伝えて交渉することで、過払い金総額の何割かの金額を支払う旨の和解提案がなされるということもあります。